「捨てられない」が変わる瞬間
片付けの現場に行くと、
モノを捨てられないと言う方が、
何らかのきっかけで
心境が変わる瞬間を目にします。
その方のココロの中では一体何が起こっているのでしょう?
「捨てられない」が「手放そう」に考えの変わる狭間。
見事にスイッチが入れ替わるのです。
一つの事例です。
押し入れの天袋に、
お客様のお嬢さん(すでに大人で、一人暮らしをされています。)の子供の頃のモノが仕舞い込まれていました。
香港の昔のお土産の革製のバッグに、何枚もある服。
そしてテニスのラケットや、大きなリュックサックなど。
お客様は、
「私が昔香港に旅行に行ったときのお土産で、娘も喜んでくれていたし、思い出のあるモノなのです。
娘にも捨てないで欲しいと言われているからこのまま置いておきます。」
とおっしゃいました。
そう聞いたので、私は大切なモノだから他のモノと収納する方向で
収納プランを考え始めました。
天袋にはお雛様もあれば、他にもご家族の思い出のモノが仕舞われています。
お客様は片付けの作業中に、娘さんにLINEで写真を送られました。
大事にずっと仕舞っておくよ、というメッセージを添えたそうです。
すると驚いたことに、
娘さんからは「もう捨ててください」と言うお返事が来たのです。
大切に仕舞っていた香港のお土産のバッグも、服も、リュックサックも、
存在自体を忘れていたとのことなのです。
お客様は、あっさりと処分する方向に切り替えられました。
そんな軽い感じで返事の来たものを残しておきたくなくなったそうなのです。
念のためにもう一度、仕舞っておくことは出来ることを伝えてもらいましたが、
娘さんの気は変わりませんでしたので、お客様も心残りなく気持ちよく手放されました。
かくして天袋の中はモノが減り、悠々と余裕のある収納が出来るようになりました。
空間がスッキリして、どこに何が置いてお有るのか分かりやすくなり、
お客様に喜んでいただけました。
こんなエピソードでしたが、
やはり人にとって、家族と言えども人のモノを持ち続けるのって相当な負担なのだと思いました。
娘さんのためだとかたくなに思って、大切にモノを保管されておられたお客様。
もしかして、かつての香港旅行や子育ての記憶を「モノ」という形で、保っていたかったのかもしれません。
お客さまが思い出のモノを手放しても良いと判断された瞬間に立ち会えました。
今までの考えが切り替わり、モノの管理の面でも、精神的にもひとつ負担が減って良かったです。